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名古屋地方裁判所 平成7年(ワ)2450号 判決 1999年11月24日

本訴原告(反訴被告)

本訴被告(反訴原告)

主文

一  原告は、被告に対し、金七一万七三二〇円及びこれに対する平成四年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告のその余の請求を棄却する。

三  原告の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。

五  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

(本訴)

別紙事故目録記載の交通事故に基づく原告の被告に対する損害賠償債務は存在しないことを確認する。

(反訴)

原告は、被告に対し、金四〇〇〇万円及びこれに対する平成四年四月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が左記一1の交通事故につき被告に対する損害賠償債務のないことの確認を求め、被告が原告に対して同事故に基づく損害賠償を請求する事案(一部請求)である。

一  争いのない事実(弁論の全趣旨により明らかに認められる事実)

1  交通事故

別紙のとおり

2  事故後の状況

被告は腎臓疾患が悪化して、平成六年二月一九日から人工透析治療を受けるようになった。

二  主要な争点

1  被告の反訴に係る請求は時効消滅しているか。

(原告)

(一) 被告は、本訴における平成七年一二月二〇日の第三回口頭弁論期日で本件事故に基づく損害賠償請求権の内容を具体的に明示して請求権行使の意思がある旨を陳述しているにもかかわらず、右の請求権につき反訴を提起したのは右の意思表示から三年を経過した後である平成一〇年一二月二四日であるから、消滅時効が完成している。

(二) 原告は平成一一年一月二七日の第一九回口頭弁論期日で時効を援用する意思表示をした。

(被告)

(一) 債務不存在確認の訴えに対して請求棄却の判決を求める答弁をした以上、被告の損害賠償請求権の消滅時効は中断している。

2  被告の腎臓疾患の悪化と本件事故との因果関係

(被告)

被告の腎臓疾患が悪化して人工透析に至った原因は、本件事故によるストレスや治療行為による投薬の副作用によるものであり、本件事故と人工透析に至ったことには因果関係がある。

(原告)

本件事故は軽微な事故であるのみならず、事故後の治療経過とりわけ被告の行動に照らせば、被告に本件事故による身体的又は精神的ストレスが生じていたものとは認められない。

3  治療期間の相当性

(原告)

被告は本件事故により治療を必要とする程度の受傷をしていない。受傷したとしても、被告の心因性要因により治療が長期化したものであり、本件事故と相当性の認められる治療期間は平成四年八月五日までと見るのが相当である。

(被告)

原告の主張には理由がない。

4  他事故との競合

(原告)

被告は、本件事故に先立つ平成三年一〇月二二日にも追突事故に遭って受傷し、本件事故前日にも症状を訴えていたものであるから、本件事故後に発生した損害に対する本件事故の寄与割合は五割程度とみるのが相当である。

(被告)

原告の主張には理由がない。

5  被告の損害

第三争点に対する判断

(成立に争いのない書証、弁論の全趣旨により成立を認める書証については、その旨記載することを省略する。)

一  被告の反訴に係る請求は時効消滅しているか。

本件記録によれば、被告は、原告の提起した本件事故に係る原告の損害賠償債務が存在しないことの確認を求める請求(本訴)に対して、平成七年一〇月二七日の第二回口頭弁論期日において請求棄却の答弁をして争う意思を明確にしているのであるから、損害賠償債務についての消滅時効はこのときを持って中断し、以後本訴が係属中は再度時効期間は進行しないと見るのが相当である。したがって、原告の消滅時効の主張は理由がない。

二  被告の腎臓疾患の悪化と本件事故との因果関係

1  甲第一七号証、乙第一一号証、調査嘱託の結果(平成一一年三月一三日受付訂正書面を含む)及び鑑定嘱託の結果(補充鑑定を含む)によれば以下の事実が認められる。

(一) 被告は昭和五九年末ころからインスリン非依存型糖尿病による入通院歴がある。平成元年一二月二日には糖尿病性腎症と診断され、平成元年一二月二日から同月一三日まで及び平成二年八月一〇日から九月一八日まで糖尿病コントロールの目的で入院治療を受けた。その後は運動療法及び経過観察が続けられていたものの、平成二年一二月ころから徐々に腎機能の悪化があった(乙一一・三三六、四一一頁、乙四三)。平成三年ころには症状の悪化はあるものの直ちに入院はできず、自宅での食餌管理もできていなかった(甲一七・六八頁)。腎機能に関する検査数値は平成四年三月一六日にはBUN(血清尿素窒素)値一五mg/dl、血清クレアチニン値一・七mg/dl、本件事故後の平成四年六月一八日にはBUN値一八mg/dl、血清クレアチニン値一・七四mg/dlであった。

(二) 被告の血圧値は平成元年ころから徐々に上昇を始め、平成三年一〇月二二日の別件交通事故の直後には最高血圧が一六〇、最低血圧が九〇まで上昇した。その後血圧値はやや低下したものの平成四年に入ると年初からまた高値が続き(甲一七・六八ないし七七頁、乙四二)、平成四年一一月一六日から降圧剤(アダラート)の使用が開始された。そして、同年一二月に入って尿蛋白、血清クレアチニン値(平成四年一二月一五日値二・一mg/dl)が上昇し、腎機能が徐々に悪化してきたことから同年一二月二六日から平成五年一月一二日まで再び入院治療が行われた(乙一一・三四五ないし三四八、四一一、四一三ないし四一七頁、調査嘱託の結果)。被告は、この入院中、減塩食を指示されているのに勝手に醤油を購入して使用していた(乙一一・三四七頁)。

(三) その後も被告の腎機能は悪化し、平成五年四月一九日にはBUN値二八mg/dl、血清クレアチニン値三・九mg/dlとなり、平成五年四月二一日から投薬(クレメジン)治療が開始され、平成五年五月二七日から同年七月八日まで、同年一〇月一四日から一二月二七日までは入院治療が行われた(乙一一・一七六ないし一八八頁)。その後も投薬治療が続けられたものの、腎機能の悪化は進行し、軽度の脳症も出現するようになり、平成五年一二月二九日からの入院中、平成六年二月一九日から血液透析が開始された(乙一一・五九九頁。退院同年三月一六日)。しかし、被告には依然として病識が不足し、入院中も間食を続け、あるいは降圧剤の服用を勝手に止めるなどしていた(乙一一 ・四一九、四二一、五三七、五四一頁等)。

2  右の各事実及び前記鑑定嘱託の結果を総合すると、被告は、本件事故以前に既に糖尿病性腎症を発症しており、被告の腎機能の程度は本件事故当時正常人の約六〇パーセント程度まで低下していたことが認められる。

この点につき、被告は、本件事故以前のBUN値は正常範囲内であること、慎重投与とされている降庄剤の処方にあたっても格別処方が問題とされていないことなどから、本件事故当時既に腎機能が正常人の約六〇パーセント程度まで低下していたとの鑑定嘱託の結果は疑問である、また、平成四年当時糖尿病の治療はなされていないし、血糖値も高くはない、腎機能不全の保存療法もされた形跡はないことに照らし、腎不全の原因が糖尿病性腎症であるとは認められないと主張する。

しかし、血清クレアチニン値、BUN値のいずれも腎臓の機能を測定する数値であるものの後者は食事の内容によっても測定値が変動し、同値の再検査で境界を示してその他の一般検査でも異常値を示すようであれば腎機能は正常の三〇ないし四〇パーセントまで低下していると考えられるとの文献の記述のあること(乙四〇)に照らすと、BUN値が正常範囲内であるからといって腎機能の低下がないとは認めることができない。また、血糖値が高くない点は、被告のようなインスリン非依存性型糖尿病の場合は、腎機能低下によりインスリンが尿に排泄される量が低下して血中のインスリン量が増加するため、糖尿病性腎症による腎機能低下が進行するにつれて血糖のコントロールは一見改善されたように見えること(鑑定嘱託の結果七頁)、本件事故以前に糖尿病又は腎症につき投薬治療は行われていないものの、「腎機能が六〇パーセント程度にまで低下した糖尿病性腎症の場合、腎組織障害は既に非可逆的な変化をしており、この時点からの腎に対する治療としては、根本的な治療というよりもむしろいかに腎機能低下の速度を低めて透析に導入されるまでの期間を延ばすかといった治療に重点が写ることになる。例えば腎不全の食事療法、高血圧、浮腫の管理等が重要となる。」というのであり(鑑定嘱託の結果三頁)、甲第一七号証によれば、平成四年当時も引き続き食餌指導、ストレス回避指導と共に糖尿病の経過観察がなされていたことは明らかであるから、腎不全の原因が糖尿病性腎症であるとは認められないとの被告の主張を採用することはできない。

3  また、前記鑑定嘱託の結果によれば、糖尿病性腎症による慢性腎不全は進行が早く、蛋白尿の出現あるいは腎機能低下が認められると二年ないし五年のうちに末期腎不全まで進行すること、糖尿病患者の場合は全身の血管障害の程度が高度であり、治療に抵抗性の高血圧や心臓・脳血管障害を合併する頻度が高く、これらの合併症が腎不全の進行を加速していると考えられること、糖尿病性腎症による慢性腎不全患者で血清クレアチニン値が一・七四mg/dlに至った患者が将来血液透析への導入となる可能性は十分に予測されることが認められること、約二年の経過で血液透析に導入された被告の経過は、右の一般的経過に比較すると進行がやや早いが、右記の合併症が併発している場合には十分考えられることがらであり、仮に本件事故に遭遇していなくても起こりうることがらであることが認められる。

被告は、腎機能の悪化が糖尿病によるものであるとしても、本件事故による身体的又は精神的ストレスが高血圧症を来たし、腎機能の悪化を早めたと主張するが、前記1に認定のとおり、被告の血圧値は平成元年から既に上昇を始め、本件事故以前の平成四年当初からはかなり悪化していたのであるから、この主張も採用することはできない。

この他、被告は、頸椎損傷により腎臓の機能不全を来たした、あるいは本件事故後の投薬が腎機能低下を進めたと主張するが、前記認定のとおり本件事故当時被告の腎機能低下はかなり進行していることが認められることに加え、前記鑑定嘱託の結果によれば、被告の頸椎症の程度や事故以後の臨床経過から考えても頸椎症が腎不全の直接の原因となったとは考えられないというのであり、また、各種降圧剤を含めた薬剤の副作用の可能性は、薬剤の副作用の際一般に認められる肝機能障害や血中の好酸球増多症は認められないことから極めて低いと述べており、被告自身度重なる入院中も病識に欠ける行動が目立ち、糖尿病、腎機能又は高血圧の悪化を回避する態度に出ていないことに照らすと、腎機能低下の原因は薬剤以外にあるものと思われ、右の被告の主張も採用することができない。

4  以上を総合すると、被告の腎臓疾患の悪化と本件事故との間には因果関係のないことが明らかである。

三  治療期間の相当性

被告は、本件事故により頸部、腰部、右手挫傷の傷害を負い、本件事故当日から平成四年一二月八日まで愛知県厚生連海南病院(以下「海南病院」という。)、河口外科、山田赤十字病院、保健衛生大学病院、伊勢市立伊勢総合病院、慶應義塾大学伊勢慶應病院、ニイツ鍼院等に入通院したと主張する。

しかし、甲第三、第四号証、第五号証の一ないし三、第六ないし第一〇号証及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1  被告は、本件事故当日(平成四年四月一七日)、海南病院整形外科を受診し、レントゲン検査上異常が認められなかったものの、頸部、腰部、右手挫傷と診断されて経過観察のために入院した。事故翌日には嘔吐したと訴えたが安静にする様子はなく、同月一九日には希望により退院した(甲三)。

2  退院後は、海南病院の紹介で同月二一日から河口外科に受診した。当時の主訴は「頭がフラフラする。腰痛。頸部痛。」であり、頸部、腰部挫傷と診断され、以後九月一日まで五四日間通院した(甲四)。また、当時糖尿病の治療で通院していた山田赤十字病院の整形外科にも平成四年四月二二日から通院した。同病院での主訴は「頭痛。身体中が水みたいに冷たい。」というものであり、頸部捻挫と診断された(甲九)。しかし症状が軽快しないことから、医師から「神経科的な治療を受けてはどうか。整形的な治療ではよくならないように思う。」と告げられ、五月二八日にいったん同科への通院を中止した(甲九・七頁)、そして同科及び河口外科の紹介により同年五月三〇日に伊勢市立伊勢総合病院外科、同年六月四日に同病院脳神経外科、同月五日に同病院内科を順次受診した(甲五の一ないし三)。その結果、同病院神経内科から整形外科への報告は「うつ病と思われます」というものであり(甲九・五頁)、同病院の河口外科への報告は、「神経学的には著変なし。・・・事故のストレス、緊張性頭痛が現在の症状の誘因となっておるものと考えられる。・・・・精神安定剤としてデパス(薬剤名)など御処方いただき、場合によっては抗うつ薬を追加されてはいかがでしょうか。」というものだった(甲四・三頁)。

3  被告は、その後も、自覚症状を訴えて河口外科で同年九月三日まで理学療法を続けた(甲四、乙三の三、四、五)。その後、同年一〇月一三日には頸部痛、頭痛、「脳にガンか何かできているのでは」などを訴えて再び山田赤十字病院整形外科を受診し(甲九・六頁)、同病院神経内科を紹介されて受診したが、神経内科医師の整形外科に対する回答は「心気妄想を伴った精神不安」というものだった(甲九・九頁)。

以上の経緯を総合考慮すると、被告の頸部、腰部等の挫傷に関する治療は、河口外科への通院を中止した平成四年九月三日までの範囲で本件事故と相当因果関係に立つものと認められ、これを超える部分は、もっぱら被告本人の心因性の症状として本件事故と相当因果関係にはないものと認められる。

四  他事故との競合

甲第八号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は本件事故前の平成三年一〇月二二日にも交通事故により頸部捻挫の傷害を負って山田赤十字病院整形外科で通院治療を受け、平成四年一月一七日ころには項部、後頭部痛が強いため外傷性頸部症候群を疑いMRI検査等がおこなわれたものの明らかな異常は認められなかったこと、しかし、本件事故前日の受診時においても頸部の「ハリで刺されるような痛み」を訴え、これが後屈により悪化し、他に小指のしびれも訴えていたことが認められる。

このことと、本件事故後の河口外科における被告の主訴が、腰痛、頸部の伸展時の痛み、小指部分のしびれであることに照らすと(甲三・七、八頁)、本件事故後の被告の症状は、平成三年一〇月の他事故によるものも含まれていることが明らかであり、その程度は、別事故から本件事故までの日数、右に認定の本件事故前日の訴えと事故後の訴えを比較すると他事故の割合が二〇パーセント程度と見るのが相当と認められる。

五  被告の損害

1  治療費(請求額三二万二八〇〇円) 二四万六九六〇円

被告は、治療費として、原告が既に支払った海南病院及び河口外科の治療費二八万二七六〇円(乙八、弁論の全趣旨)のほか、河口外科につき平成四年八月一七日及び同月二五日分合計五四〇円(乙三の六の一、二)、山田赤十字病院につき同年四月二二日、同年五月一一日、同月一二日、同月二〇日、同月二八日、同年八月一七日、同年八月二四日分合計二万五四〇〇円(乙四の五の一ないし七)、藤田保健衛生大学病院整形外科につき平成四年一〇月二日及び同年一二月八日分合計五〇四〇円(乙五の一、二)、薬王堂医院につき平成四年九月四日分二〇六〇円(乙六)、ニイツ鍼院につき七〇〇〇円(乙七)の合計三二万二八〇〇円を請求するが、このうちニイツ鍼院における鍼灸治療は必要性があったと認めるに足る証拠がない。また、前記三に認定したとおり平成四年九月四日以降の治療は本件事故と相当因果関係が認められないから、藤田保健衛生大学病院分全額、薬王堂医院分は本件事故による治療費と認めることはできない。

そして、その余の治療費(原告既払分二八万二七六〇円、河口外科分五四〇円、山田赤十字病院分合計二万五四〇〇円の合計三〇万八七〇〇円)についても、前記四で認定のとおり他事故による傷害に対するものも含まれているものと認められるから、その八〇パーセントに当たる二四万六九六〇円についてのみ本件事故と相当因果関係に立つものと認めるのが相当である。

2  入院雑費(請求額三六〇〇円) 三一二〇円

甲第三号証、第八号証、弁論の全趣旨によれば、被告は、本件事故後、経過観察のため三日間河口外科に入院したことが認められるところ、前記四に認定のとおり被告は当時既に他事故による頸部捻挫の傷害を負って治療中であったから、入院雑費についても一日一三〇〇円の八〇パーセントの範囲で本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当である。

3  入通院慰謝料(請求額一五〇万円) 六八万円

前記三、四に認定した被告の本件事故による傷害の内容に照らし、入通院慰謝料は八五万円をもって相当と認めるところ、前記四で認定のとおり他事故による傷害に対するものも含まれていると認められるから、その八〇パーセントに当たる六八万円についてのみ本件事故と相当因果関係に立つものと認めるのが相当である。

4  休業損害(請求額一〇〇七万八三一五円) 零円

被告は、本件事故以前においては、少なくとも年収六三七万九九四七円の収入を得ていたが、本件事故後、平成四年度の年収は二八五万九六八二円、平成五年度の年収は六六万〇九〇三円、平成六年度一月、二月の収入は零であるから、本件事故の日から血液透析を開始した日の前日である平成六年二月一七日までの休業損害は、事故以前の年収とこれらの実収入の差額の合計である一〇〇七万八三一五円であると主張する。

しかし、甲第一八号証の一、二、乙第一四号証の一、二、調査嘱託の結果、弁論の全趣旨によれば、被告は従前から真珠、貴金属等の装飾品卸の仕事をしていたものであるところ、その申告所得は平成二年、三年においてはいずれも赤字であったこと、本件事故当時、糖尿病性腎症の状態は悪化しており、少なくとも一部稼働不能の状態にあったこと、約半年前の交通事故による通院中であったことを総合考慮すると、本件事故により休業損害を生じたと認めることができず、他にこれを認めるに足る証拠はない。

5  後遺障害慰謝料(請求額二〇〇〇万円) 零円

被告は、本件事故により腎機能が低下して血液透析を受けるに至ったから、後遺障害が残存し、その程度は後遺障害等級三級に該当すると主張するが、前記三に認定のとおり、腎機能の悪化と本件事故との間に相当因果関係は認められないから、本件事故の後遺障害があるとは認めることができない。

6  逸失利益(請求額四九二二万八九八三円) 零円

前述のとおり、本件事故の後遺障害が認められない以上、逸失利益も認めることができない。

7  小計 九三万〇〇八〇円

8  損益相殺 二八万二七六〇円

乙第八号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は原告から既に二八万二七六〇円の支払いを受けたことが明らかであるから、これを損害額から控除するのが相当である(残額六四万七三二〇円)。

9  弁護士費用(請求額三〇〇万円)

前記認定の損害の内容に照らし七万円が相当である。

六  結論

以上によれば、被告の請求は七一万七三二〇円の限度で理由があり、原告の請求は理由がない。

(裁判官 堀内照美)

事故目録

(一) 日時 平成四年四月一七日午後一時五〇分ころ

(二) 場所 愛知県海部郡弥富町大字小島新田字附新田七七三の五先国道一号線上

(三) 加害車両 原告運転の普通貨物自動車

(四) 被害車両 被告運転の普通乗用自動車

(五) 事故態様 交差点で信号待ちのため停止中の被害車両に加害車両が追突

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